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もう何年もたってしまったけれど。
私は3つ目の病院で、初めてカウンセリングを受けることになりました。
男性恐怖症だったから、女性の先生をとお願いしました。

なのに、現れたのは私より2歳下の男の先生。
固まって、口も利けなかった。
2年経った頃先生は私に言いました。


「あなたの心の殻を割るのには一年かかったんですよ。」


ずっと毎週一回お会いしていたはずなのに、記憶は確かに二年目くらいから始まっていました。

先生の目に初めて映った私は重度のうつ病で病歴も10年を超えていて、鬱からくる病気をたくさん抱えていて。
今でも後遺症が残るくらい、脳がダメージを受けていて。

そのとき先生は「これは時間がかかる。」はっきりそう思ったそうです。
先生はすぐ怒る。持っているボールペンをカルテにたたきつけ、きつい事を言われて何度泣いたことか。

精神戦の末たおれて、点滴を受けたり。
でも、どうしてなんでしょう。先生は手を緩めない。

私が泣こうが倒れようが、変わらずにいつも本気で私にぶつかってくる。
そうかと思えば、いきなりサッカーWカップの話を始めたり。

お互い哲学論で熱くなったり。宗教や、旅行、学生時代のアルバイトの話で盛り上がってカウンセリングそっちのけになったり。

私はもうどうしょうもないくらい先生を慕っていました。
頭の中は先生のことでいっぱい。

先生だけにしかわからない私の悲しみや喜びがあり、誰かに理解してもらえることが私にとっていかに必要だったのかを知りました。
先生は私が先生に恋をしているのは当然知っていました。

私は何一つ先生に隠し事はしなかったし、どうせうそをついてもすぐばれる。
カウンセリングしていると、4割の患者さんはそれに近い状態になる、先生はそういっていました。

でも、とうぜん、この恋は実らないもの。
先生は、「僕が思っていたよりは、期間が短かったな。」終わりの日にそういいました。
笑顔でこういいました。「僕は貴方の代わりに哲学を語り合う相手を探さなければならないですね。」

こうもいいました。「貴方は僕に隠し事できないひとだったけれど、僕もあなたにはかなり見透かされていましたよ。」

先生。あれから何年もたったけれど私が地獄から生還して、また社会に戻り仕事をしているのはあなたのおかげです。

カウンセリングが早く終わったのは、恋のせい。私が先生を好きになったからでしょう?
私はそう思っています。もう先生は病院を辞め、どこに行かれたのかはわからない。

きっともう二度とあえないけれど。だいすきでした。
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